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逃れられない親子関係の悩み、修復はあり得るのか?

2冊の母親を題材にした本は、衝撃的だった!

ずっと以前読売新聞に連載されていた『母の遺産』に続いて、親子関係を辛辣に書いた『母という病』を読みました。

私と状況が似ている『母の遺産』

母の遺産は小説です。新聞でも読んでいましたが、読み飛ばしていた部分もあり、今回本でもう一度読んでみたのです。

状況が二人姉妹の妹目線で、私と同じ年代の方であったことと、姉ばかりに愛情を注ぐ両親、母が実家にプライドを持っていたことなどが、私の状況とピッタリ合致しています。 石畳の上で裸足

さらに、夫との二人暮らしで、子供がいないことも我が夫婦関係と同じ。自己主張の強い母に、日常生活を振り回されていることも、全く持って何もかも同じじゃないと、改めて気づきます。

高度成長期で、次々に物が増えていった時代、第一子に全精力を上げて可愛がるのは、どのお宅も同じであったはずです。中流家庭を夢見てピアノを習わせ、芸術の一つでも語れる上品な女性にと願うのも、多くの家庭で行われていた事です。

美津紀は、姉が通うピアノ教室にカバン持ちとして、母と共にお供します。自らは習うことがないピアノを、姉のカバンを持つために同行しつづけるのです。その後、姉はピアノを続け音大を卒業後、豊かな家に嫁ぐことになります。

母の遺産では、主人公美津紀が、母の我がままに振り回されて介護するのは、もっぱら待遇の悪かった美津紀の方です。姉はなんだかんだと言いながら、逃げていきます。ここも私の家と同じ(苦笑)。

やがて、海外へ赴任した、夫の浮気を発見します。自分より遥かに若い夫の浮気相手に、衰え始めた自分の容姿を小馬鹿にされたメールを、一晩中読み続け、目の周りを真っ赤にはらします。

それでも、母の介護をしながら、誰にも支えられることのない心境のまま、苦悩の日々を送らなくてはならないのです。皆、自分のことだけね。『ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?』多くの介護者経験者が漏らす言葉を、美津紀もやはり頭に浮かべます。

救いようがない気持ちになりながら、読み進んでいくうちに、美津紀の母は亡くなります。全てを精算させるために、箱根のホテルに長期滞在を決意します。介護のねぎらいとして遺産の多くを、姉から譲り受け、今後の身の振り方を考えるためです。 鍵

やがて、心の糸はほぐれ夫との離婚を決意し、美津紀が一人で生きていく決心をします。母からも夫からも、今までの過去からも解き放たれる解放感が、読んでいる私にも伝わってきました。

『やったねぇ~。これからは、一人で生きていけるわよ。逃れようのない人間関係の渦に巻き込まれ、我慢を重ねていくぐらいなら、一人の孤独の方がよっぽどましじゃないの』と、私ならこう言っているはず。美津紀も、そう言っていたはずです。

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箱根のホテルで、同じ長期滞在をしていた方と恋の気配もありましたが、さらりとなにも無く終わらせているのも、母の遺産の結末として良いと感じました。

ここまで深刻だった『母という病』

『母という病』は、小説ではなく精神医師が書いたドキュメンタリーです。著者、岡田尊司氏が、 診察を通じて知り得た情報をさらに掘り下げ、歪んだ精神の理由を紐解いている話となっています。

愛情たっぷりの育てられた子供は、心は自由で行動に自信を持ち、前向きに生きていくことは可能です。でも反対であれば、周囲の目を気にして臆病になりがちです。否定され、無条件に愛情を貰えなかった人は、自己評価が低くなりやすいと書かれています。 軒先につるされた小物

性犯罪、麻薬などに溺れた方の裏には、母親との関係にあるとし、まるでドキュメンタリードラマを見ているようです。目覆いたくなるほど、人生の奈落の底に落ちていく様と、母親から受けた傷とその心のあり様を、如実に書いています。

犯罪にまで至らなくても、うつ、依存症、接触障害、自傷、ひきこもり、虐待、離婚、完璧主義、過度な献身も、母という病にからだと結論しています。満たされない心を埋めるために、認められなかった自分を探すために、奔走する心の病を抱えた子供たち。時には愛されなかった母親への献身として、時には犯罪として、時には。。。。 あげは蝶

『救えないじゃない?』って読んでいて思いました。『もう、読むのをやめよう』と思った時、ジョン・レノンにオノ・ヨ―コ、ジェーン・フォンダ、ショーペンハウエル、ヘルマン・ヘッセ、マルグリット・デュラス、岡本太郎、与謝野晶子、ユトリロといった、著名人たちも母という病であったことを書いています。

満たされない心の行き先は、如何様にもあるというのが、この本の言いたかったことなのでしょう?岡本太郎さんは、虐待死しなかったことが奇跡とまで書かれています。

他にもこうした逃れられない家族の人間関係を、主題にした書籍が紹介されてきています。介護の本を読んでいても、正直のその心のうちが書かれていて、『やっぱり、あなたも』と安心します。

もう、綺麗事だけではすまされません。これから子育てをする若い母親の教科書とは違う、社会問題の奥底にある現実を多くの人が知る時期にきているって、2冊の本を読んでいて考えました。

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