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甘春堂の茶寿器で疑問が湧いた!抹茶に砂糖を何故入れない?

器の甘みが抹茶を引き立てる

甘春堂(かんじゅんどう)の茶寿器(ちゃじゅのうつわ)を頂きました。最初、茶寿器が食べられることを知らずに、シックな黒い箱箱から出したとき、どれくらいの価値があるのだろうと頭をかすめます(私はガメツイ!)。茶寿器の箱

つるつるしたうわぐすりがかかっておらず、年代物と思われるのでつい目が¥になりました(笑)。『この抹茶茶碗はお菓子でできております』のメモが入っていて、茶碗にかぶりつく自分の姿を想像し、思わずニヤリ。(かぶりつくどころか、食べる際には臼を使わなければ割れません。)茶寿器はお菓子でつくられている

ただ、このユーモラスな発想のお菓子が、創業1865年 100年以上続く和菓子屋さんの看板商品と知り、昔の人もこんな発想をしたのかと感心します。茶寿器は、江戸の後期 2代目の作です。日本版『ヘンゼルとグレーテル』かな?

茶寿器で飲むと甘いシナモン抹茶になる

茶寿器は門外不出の献上菓。茶寿器についての説明書

手触りは素焼きの抹茶茶碗のごとく、ザラザラ、ゴツゴツしています。ぷーんと鼻をくすぐるのは、なんとシナモンの香りです。江戸時代?抹茶?シナモン?と、いずれもちぐはぐな印象です。江戸時代の茶人が、お菓子のお茶碗でお茶を点て、シナモンの香りと茶碗の甘みで、抹茶を楽しんでいたのでしょうか?

西洋のシナモンコーヒーならず、茶寿器はシナモン抹茶ですかね。

私も水で溶かす緑茶を入れて、ブレンダーでかき混ぜて飲んでみました。私は、もう言うまでもなく、お茶はド素人です。でも、抹茶に関して、あれこれと頭に浮かんで離れなくなりました。茶寿器に緑茶を入れてみる

お緑茶を甘くして飲む習慣はなかった

ふと。日本のお茶には何故、砂糖や、ミルク、レモンを入れないのかと、疑問が湧きます。日本は西洋と違い、砂糖が入ってきたのは遅く、奈良時代。最初は、薬として扱われてきましたが、茶の文化の広がりとともにお茶請け用のお菓子に使われ始めます。といっても当初の砂糖は非常に贅沢品でした。また、西洋の苦みが強い茶葉より、日本のお茶は断然美味しいこともあり、砂糖を入れる必要性がなかったといわれています。

抹茶といえば、真っ先に思いつく千利休ではないでしょうか。千利休のお茶請けは、今の時代のように、色あでやかなものとは違います。利休がお茶会でよくお茶請けにした「ふの焼」は、小麦粉を水で溶いたものを焼いて、表面に味噌をぬり、それをくるりと丸めたものだったそうです。

当時は、小麦粉も貴重であったことから、高級なお菓子であったとはいえ、現代の甘いお菓子とは程遠いものがあります。

鎌倉時代からゆっくりと発展してきた和菓子は、茶の湯の席があったからこそです。利休以降の茶の湯は、将軍家や武士の社交場となり、やがてお茶の道具の価値が武士の財力の現れになっていく時代に突入していきます。

江戸時代に入り砂糖の輸入量が増えると、和菓子が庶民の間に広まり、独自の製菓技術が発達していきます。京都では現代のような、みやびな和菓子も作られ始めたといいます。参勤交代制度によって各地の街道が整備され、多くの人の移動によって、各地の銘菓や名物菓子が広まり情報量も増えたからです。

江戸時代は、和菓子職人の腕がめきめきと上がった時代なのでしょう。現在の和菓子の種類のほとんどが、江戸時代から継承しているといわれているのです。

和菓子の大部分の原料は砂糖です。茶寿器も砂糖が、原料の大半を占めています。日本人は西洋の文化を真似したわけではありませんが、コーヒーのようにお茶を点てる際、お菓子の甘みで味を引き立てて飲むようになっていったのです。

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利休の時代の素朴な抹茶が、お茶請けの進化することで、甘いお菓子へと主流になっていったようです。

現代では抹茶と甘みの相性を誰もが知っている

日本人は、未だ持って抹茶や緑茶に砂糖を入れませんが、抹茶も緑茶も甘いものと相性が良いのです。例えば、世の中の抹茶スイーツは、増える一方。ケーキ、ソフトクリーム、チョコレート、クッキーと、バームクーヘンと、あらゆるアイテムに抹茶は使われています。その人気は衰えることなく、次々と新しい抹茶スイーツが現れています。

世界中で飲まれている日本の緑茶にも、砂糖を入れて甘くして飲んでいます。外国人が、来日後、緑茶のペットボトルを飲んだ時、甘くないことに驚き、緑茶にはお砂糖を入れないものであることを初めて知るのです。味がない緑茶の何がおいしいのかと、首をかしげる外国人の姿が目に浮かぶようです。

茶寿器は茶人にうけた

勝手に妄想を膨らませていますが、江戸時代から何年もかけて受け継がれてきた抹茶文化を、江戸時代の初期に、甘春堂の和菓子職人が心得ていたと伺えます。なんとも面白いと思いませんか?茶寿器が作られると、当時の茶人に大いにうけたそうです。

砂糖でできた抹茶茶碗の中で、茶筅を回して茶碗を削りながら、甘みを抹茶にしみ込ませていくのです。茶道の作法とか、そんな硬いこと言わないで、とにかく楽しんじゃえみたいな遊び心がいいですよね。抹茶を点てているところ

実際飲んでみて、甘い抹茶を楽しめましたし、シナモンの香りでリラックス感がまします。シナモンが、日本古来の飲み物のイメージを壊します。そういえば、京都の八つ橋もシナモン味があり、京都のイメージと違うと思ったことありました。

ただ飲み終わって、衛生的にはどうかなと考えます。茶寿器を何度も使い続ければ、茶碗の外側は手の汗や皮脂が浸み込んでしまい、食べるのに抵抗があります(ごめん)。抹茶を点てて飲むなら徹底的に点てる、茶碗を食べるならすぐに食べると、いずれかに決めた方が良さそうです。何度も抹茶を点てつくした後は、飾っておくという手もあります。

私は1回点てただけで、直ぐにビニールへ入れて、ビニールの上から臼で勝ち割りました。意外と硬いし、茶碗の高台(一番下の縁になっているところ)の部分は、分厚くなっています。割ったのちに、口の中に入れてみると、ざらざらとした舌触りで、おせんべいみたいな落雁の食感です。何日かに分けて、全部ひとりで食べてしまいました。茶寿器の高台

抹茶茶碗の他に、新玉(大徳寺納豆入りすはま)・季節の落雁、ひさご、生砂糖がセットになっています。茶寿器と千菓子

ちょっと、こちらの新玉は先ほど書いた、千利休のふの焼を思わせる作りです。乾燥しているけどもちもちっとした皮の中に、少し納豆が入っています。納豆の原料は言うまでもなく大豆で、味は味噌に似ているのです。甘くはないけどおかずでもない、やはりお菓子と思えるのが不思議です。新玉を割った様子

季節の落雁は、タケノコ、藤の花、楓がはいっていました。 茶寿器と千菓子

生砂糖の松葉はニッキ入り。

ひさごは表現が難しいくらい変な味ですが、悪くはありません。ひさご

敬老の日のプレゼントにも良さそうですね。

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