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医療進歩の裏側をパロディ化

本音だけど倫理違反?

「カネと共に去りぬ」は、世界の名作をパロディー化して、医療現場の矛盾を描いた短篇小説です。あたかも楽しんで書いているようにも思える内容には、背筋が寒くなるほど倫理違反の臭いがプンプンしています。これをブラックユーモアの一言で言いきれるのかと、もっと適切な言葉を探したほどです。

倫理違反だけれども人間の本音も垣間見え、誰も口にはできないけれど納得できる部分もあるから余計に複雑です。

「カネと共に去りぬ」を読んだ

ページを読み進めるうちに医療現場の問題が、次々に暴露されていきます。過剰医療、クライオニクス、認知症、延命治療、動物実験、医療研究者の将来性、最先端医療の安全性などなど。。。医療関係者ならではの視点であぶりだされていきます。

医師や医療関係者はそうした矛盾や問題点を知りながら、建前や綺麗ごとの言葉でやり過ごしていくとあります。波風を立てないように矛盾や問題点を覆い隠して、自らの立場を守り続けざるを得ないのが現実です。

ただ、それを全否定はできません。

患者や患者の家族がたとえ、過剰医療や延命治療は嫌だと思っていたとしても、医師に同様のことをはっきり言われれば医師へ不信を持つに決まっています。こうした医師の態度や言動は、必要悪です。

医療の進歩の裏側を知ってどうする?

もし患者となりうる私たちは、こうした矛盾を知識として知ることでいったいどんな得があるというのでしょう?

過剰医療や延命治療は必ずしも患者のためにはならないとか、動物実験用に使われるのはビーグル犬で他の種類の犬を使うと虐待になるとか、医療研究者より開業医の方が収入が良いとか、最先端医療ともてはやされたレーシックは実は30年後は角膜が破れる原因だったとか、知っていったい何になるのでしょう。一つ訂正すると、レーシックの場合は知っておくべきです。

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時代とともに多くの難病の治療方法を開発し、平均寿命を延ばしてきた医療の裏側を知ったとしても、一般人は何もできません。

筆者の久坂部羊氏が医師という仕事をしながら、こうした矛盾に心を実は痛めているんだと訴えたかったのかもしれません。ただ、誰も悪気があってしている事ではありません。多くの場合各々の立場の医師が、最善と思われる方法で行動し続けていた結果、生まれてしまった矛盾や問題点です。

この本のテーマとは別のことを考えた

私的にはこの本を読み終えて完璧な人間がいないように、医療で全てが解決されるわけでも、幸せが約束される訳でもないという結論を出しました。

短篇の中に死を覚悟した女性が、クライオニクスに望みを託して亡くなった話があります。クライオニクスは自らの体を冷凍保存し、医療が進んだ遠い未来に解凍され、治療を受け再び生き返る技術です。この女性は遺言を行い蘇る希望を持ち、幸福感を感じながら死後の世界に旅立ったと想像します。医療って患者にとっては、矛盾があろうが夢物語であろうが希望です。

病気が治らなくても、治そうとしてくれる医療機関があればそれでいいのですよ。かなりこの本のテーマからそれてしまいましたが、筆者の久坂部羊氏にそう伝えたくなりました。

ディスりましたが、内容は面白かったのでアマゾンのURLを貼っておきます。↓

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