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受刑者の更生を助ける刑務官の手腕に心がほんのり

看守の流儀を読んでみた

本のタイトルは『看守の流儀』ですが、文中では看守の文字はなく刑務官で統一されています。何故タイトルの”看守”が、本文中に使われないのでしょう。

刑務官と看守の違いについてGoogleで調べてみると、刑務官は看守を含む総称だということ。刑務官は刑務所で勤務する職業のことで、看守は刑務官の1番下の階級を表し、受刑者と接する機会が最も多い方達と察しました。

あえて”刑務官の流儀”とせずに”看守”にしたのは、刑務官と受刑者との人間模様を丁寧に描きたかったに違いありません。ストーリー展開に、心がほんのりとさせられました。

主人公・火石司は、機転が利き頭脳明晰でやり手、人情も理解して優しく、理想の刑務官という人物像です。そのためでしょうか?現実の刑務官の仕事とは、若干かけ離れていて逸脱した行動もあります。

そういえばテレビの刑事ドラマでも、犯人逮捕のために常軌逸した捜査をよく目にします。「そこまでは、しないよね」的な、ツッコミをいれてしまうことありませんか?(私はあります。)こうしたドラマと同様と考えれば、次々に起こる事件にのめり込み一気に読めました。

不意を突かれる解決策に感心の連続

私たちが考えている以上に、刑務官は社会的な立場や視線を意識しなければならない職業だと知りました。刑に服する受刑者を更生させる施設で働くためには、刑務官自身も襟を正さなければなりません。

刑務官の仕事は、刑務所ならではの規律や受刑者同士のトラブル、受刑者との人間関係に縛られています。受刑者が病に倒れたり、介護が必要になったりすれば、さらにケアをしなければなりません。

ストーリに舞台である加賀刑務所は、凶悪犯が多くいるいわゆる手に負えない刑務所で、その中で起こるトラブルが5つの短編にまとめられていました。

事件の状況や刑務所の立場などが詳細に書かれていて、絶対解決は無理だろうと最悪の事態を覚悟する伏線を敷かれています。そこに火石の不意を突くような解決策で、万事丸く収まっていくのです。”火石マジック”と書かれていて納得します。規律違反かも?いや、誰も損はしないからいいだろうみたいな、刑務官同士の会話もありました。

ストーリー上の刑務官は時には、探偵のように推理をしたり、警察官のように張り込みをしたり、介護士のように年老いた受刑者の介護をしています。また、過去のトラウマに悩まされる受刑者に対して、セラピストのように接したりもしていました。あるいは、保護観察官のように、出所後も見守らなければならない受刑者の対応にもあたっているのです。

現実は受刑者が抱えている問題を、全てサポートすることはできないでしょう。仕事ですし、割り切りも大切です。しかし、これは多くの刑務所の日常の一つにすぎず、刑務官が日々頭を悩ませていることであるに違いないのです。

キーワードは色眼鏡かな?

5つの短編に共通して見えるキーワードに、”色眼鏡”がありました。刑務所を舞台にしたストーリで、筆者が言いたかったことはこの辺にあるのではと。。。勝手に思うのです。

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第一話『ヨンピン』

ヨンピンとは、刑期の4分の1を残して、出所できる受刑者のことです。

ヨンピン出所前の受刑者に届いた差出人不明の手紙を、悪い仲間からの誘いと刑務官が勘違いします。刑務官は、規則を破り受刑者にその手紙を渡さなかったために、さらに話は混乱していくのです。

差出人を突き止め手紙の目的を知り、受刑者が目指す暮らしを明らかになった時、心が温かくなりました。無論、犯罪とは無縁の地道な暮らしです。

第二話『Gトレ』

Gトレでは、刑務所内で印刷する試験問題が流出する事件が起こります。

刑務官は犯人の目星をつけますが、意外な人が本星でした。『Gトレプログラム』と呼ばれる、暴力団から足を洗う更生プログラムを受講する優等生だったからです。

第三話『レットゾーン』

レットゾーンとは、介護が必要な人ばかりを集めた刑務所内の場所をいいます。多くの場合、刑務官が介護を行うため、他の拘留場所で勤務するより仕事は過酷です。

医務室の健康診断の記録が紛失し、疑いの目がレッドゾーンに勤務する刑務官に向けられます。実務を行わない総務部に対してひがみ、嫌がらせをしたのではと捜索に当たった刑務官が考えたのです。同じ刑務官の中でも、色眼鏡はあるんですね。

第四話『ガラ受け』

この話では泣きました。

刑務官は余命宣告を受けた受刑者に対して、刑の執行停止を行い自宅で最期を迎えさせたいと考えました。家族の家を訪問し身柄を引き取ってもらいたいと頼みますが、複雑な事情があり容易に受け入れてもらえません。

刑務官が刑の執行停止にこだわった理由は、刑務所内で亡くなった引き取り手のない受刑者の最期を知っていたからです。火葬場で焼いたのち、骨の一部だけを合祀墓と呼ばれる無縁仏の墓に入れ、他の骨は産業廃棄物として捨てられてしまうからです。亡くなっているとはいえ、命の重さの違いに啞然としますね。

面会だけでもと説得して面会にこぎつけますが、受刑者は面会室に行くことをかたくなに拒みます。医務室へ行く口実をつくり、受刑者を連れて行きます。医務室の窓から見える刑務所の壁の隙間に、何年も会っていない娘の姿を受刑者は見つけるのです。感涙、感涙しましたよ。

第五話『お礼参り』

犯罪は、加害者だけでなく被害者の心もボロボロにしてしまいます。刑事ドラマでも、復習とかお礼参りをテーマにした話は尽きません。

加害者が犯行に走ったきっかけは、最初の拘留後に出所したものの、どこの働き口も断り続けられたことが原因です。同じ状況に陥った出所した犯罪者に、当たり前とか、わかりきったことと言わせています。悲しいですがこの色眼鏡は現実です。

刑を終えた加害者を、被害者のお礼参りの手から守る方法に、またしても目が飛び出るほどビックリ。というか、目から鱗でした。ネタバレしたくありませんので、この辺で止めておきます。

加害者と被害者との話が交差して、最初はどちら側の話なのか分かりませんが、最後に一気にそのベールがはがされ、そのカラクリを知ることになります。

この時の火石刑務官の手腕というか、作戦に、「うーん」とうなざるを得ませんでした。

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