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「今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略」を読んだよ

これほど超難問だらけで何故ブランド化できたのか

今でこそ知らない人はいない今治タオルのブランドですが、今から12年前は瀕死の状態で、愛媛県今治市のタオルメーカーは次々に倒産していました。掲題の本は、多くの商品をヒットさせたグラフィックデザイナーの佐藤可士和氏が、今治タオルのブランド化をプロデュースする過程が描かれています。

商品をヒットさせる裏側を見られる高揚感と、NHKのプロフェショナルを見ているような危機感、緊張感、プレッシャーも伝わってきます。今治タオルのブランド化に向けて、一か八かの大勝負に掛けた人たちのドラマを十分味わえる本です。

しまなみ海道

超難問な状況

面白さは超難問だらけの状況でありながら、ブランド化に成功させた経緯にあります。佐藤可士和氏自身、全く勝算がなかったといっていました。

その超難問な状況とは・・・

タオルの価値観は千差万別

個人的にタオルをブランド化させる難しさは、価値観の個人差が開きすぎているためです。

例えばこだわる方の気持ちは、こんな風なんじゃないでしょうか。トイレでは頻繁に交換するので薄い収納に困らないタオルとか、洗面所は使う頻度が高いので速乾性のもの、或いは分厚く糸が詰まって濡れにくいタオルが良いとかです。さらに、入浴後のバスタオルは、家族が一緒に使うので大きくてゴワゴワの分厚いタオルとか、逆に肌当たりの良いふんわりしたものが良いとか、反対に各個人ごとに使うのでフェイスタオルサイズとかあるでしょう。家族て使う色が決まっているとか、逆に白で統一しているとか、インテリアに合わせたデザインに決めているとか、風合いの良さ一点で選ぶという方もいるかもしれません。

全くこだわらない方も大勢います。予算に合わせて選びやすいタオルは、ギフト商品の定番です。お店からの年始の挨拶、転入者からのあいさつ、町内会のイベントや快気祝いや出産祝いのお返しなど、私自身も多くのタオルを受け取ってきました。自分でわざわざ買わなくても、貰い物であってもそう不便は感じないアイテムでもあります。多分、こちらの方が大半なのではと思うのです。

こだわる人の好みは千差万別だし、こだわらない人なら尚更何でも良いのだし、ブランドもののタオルなんて必要性はあるのか思うのも無理はないのです。

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ブランド化の相手は四国タオル工業組合

ブランドは1企業のものと考えていましたが、今治タオルの場合、四国タオル工業組合に加入している100社のタオルメーカーです。意思決定がしにくく、各々のタオルメーカーが作るタオルの特色が異なっています。ブランドイメージを決定づける、1番良いタオルを誰も教えてくれる人はいませんでした。

オーナー企業ならブランド化が行き詰まり予算に限界が来たとしても、その企業の都合だけで判断できます。複数のメーカーの寄せ集めとなれば、メーカー毎の規模や利益率などの違いから一律に金銭面を負担は難しいものがあります。

組合はブランドプロジェクトを始める前に、既に17億円の借金を抱えていたといいます。追い打ちをかけるように1980年代後半から、安い輸入品が激増し日本のタオルメーカーは苦境に立たされます。国内生産の5割以上を占めていた今治タオルも、1991年に500社以上あったタオルメーカーが現在では116社に減ったそうです。

限られた予算の中から今治タオルをPRするために東京に店舗を置き、ヨーロッパの展示会にも参加していきますが、それはそれは大変だったようです。2007年には伊勢丹本店に今治タオルの売り場が設けられ、2008年にはNHKの『クローズアップ現代』で紹介されます。結果、2004年36.6%だった今治タオルの認知度が、2008年に50.2%、2012年には71.0%にまで達しました。

ブランド化を成功の理由はタオルそのものの品質

書籍の中で明言していませんが、今治タオルのブランド化が成功できたのはタオルそのものの品質が高かったからです。

今治タオルメーカーのうち数社に関しては、各々のタオルの織り方や取引先などを紹介していました。どのメーカーも独自に明確なコンセプトを持っています。同じ今治タオルでありながら、製法や糸の太さ撚りは違いますが、いずれも一流ホテルやスポーツセンターで受注を受け続けていました。

こうした確かな実績を支えているのは、『日本タオル検査協会』で定めた基準より、組合で独自に定めたはるかに厳しい12項目の品質基準です。タオル作りへの真摯な姿勢が、結果、今治ブランドの成功になったと想像するのです。

あの有名な「新品のタオルを水に浮かべると、5秒以内に沈む」という基準は、今までのタオルの常識を覆しました。新品のタオルは吸水が悪いために、来客時に使用する場合でも事前に洗濯しなければなりません。箱から出したばかりの新品の方が気持ち良いのにと、しっくりこない気持ちを持ったのは私だけではないはずです。

そして、今治ブランドの品質の評価が低下したり、不当に安売りされることがないように、組合で検査体制を整え実施し続けているそうです。

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