ワインの作法で縛られずに自由に楽しもうよ
先日、ベルメゾンが主催する『シニアソムリエ伊藤啓介氏による ワイン飲み比べ学び味わうミニレッスン』に参加しました。会場は、半蔵門線水天宮前から徒歩5ぐらいのところにある、Table d’Hote(ターブルドート)という名前のスタジオ。
ターブルド―とは、フランス語で心をこめてゲストをもてなす食空間という意味だそうです。 広々とした空間の真ん中に、どっしりとした大きな木のテーブルで、くつろいだ気持ちで過ごしました。参加者は10名以上いたでしょうか?端に座る人どおしが、余裕で会話を交わすことができるような距離です。
他の日でもスタジオの収容人数は16名まで、静かで、ゆったりとした空間を楽しむべくして、つくられたのだと感心してしまいます。
都会のレストランは、得てしてざわめきが気になります。時には隣の方の会話が耳に入ったり、料理を運ぶボーイの影が目の隙間に入り、折角の集まった人たちの会話が楽しめない時があります。16名という人数制限は、確かに家庭のおもてなしを想定しているようです。
帰り際に気が付きましたが、『ワインを楽しむ作法は必要ないけど、楽しむための環境は必要ね。』と、この部屋を出ながら思ったのです。
ソムリエでなくマーケッターの手腕に脱帽
ちょっと早めにターブルドートに来た私は幸いなことに、この日の講師のシニアソムリエ 伊藤啓介さんの斜め向かいに座りました。通常私は、あまり自分から話す方ではなく、どちらかといえば引っ込み思案な方ですが、ワインをテーマにした記事を書く上での悩みを、ぼそぼそと呟いてしまいます。『そう』、『しまった!』と思った時は、話していました。
伊藤さんから、即答の返事がきました。飾りっ気がなく短い言葉だったのに、周囲の気持ちを和ませ、何よりその言葉がしっかりと私の心に定着しました。『ふーん、普通の方』と思った後に、親戚のおじさんと会話しているような(ゴメンなさい)親密感を覚えます。『この方が、紳士や貴婦人相手に会話をしてきた、ソムリエ?』。『まさか』と思いましたが、そのまさかだったのです。
伊藤さんは、ソムリエと言うより、ワインマーケターという肩書を持っています。かつて私は、マーケティングとは『人の心を射抜くこと』という説明を受けたことがあります。最初の雑談で、私は既に、してやられていたようです。
講義の切り出しに、教科書に書いてあるようなことを話さないで、尖ったことを話すと宣言していました。ブロガーは、どこにでもある話ネタは好みません。ここに参加した人は、全員ブロガーです。誰もが、この言葉にほくそ笑んだに違いなく、この段階で全員が、伊藤さんを好きになっていたはずです。
私は雑談の中で、ワインに合う料理が思いつかないことと、ワインの味をどう表現したら良いのかわからないと質問しました。ワイン初心者なら、誰しも悩むことであり、毎日、ワインを飲み続けなければ答えが出ない難問であるだけに、知りたい点でもあります。
講義の話もこの2点が、大きなテーマとなっていました。
ワインの味をどう表現するの?
ワインの味や香りは、甘い、すっぱい、苦い、渋いといった定番の表現のほかに、花などの植物、フルーツなどに例えた表現方法もあります。ワイン通の方やソムリエは、上手に使いこなせるようです。
多くの人はワインの味は複雑で、正確に表現できません。ワイン通を気取って、口真似しても、きっと浮くだけでしょう。自分だけが違うことを思われたくない、恥をかきたくないという思いが、表現に慎重になり、言葉が浮かんでこないのです。
自分の体の内面に目を向ける
ワインの味や香りを伝えるには、自分の体の内面に目を向けるのだそうです。
香りは自立神経をコントロールするとして、昨今アロマテラピーがもてはやされていますが、ワインにも通じるものがあるといいます。香りの中には、リラックス、高揚感、爽快感、集中力を高める、眠くなる、目が覚める、しゃきっとするといった具合に、人の体に働きかけてくれます。
アロマテラピーの香りには、リラック効果があるのはラベンダーですが、人によってその感じ方は違っていて良いのではというのが伊藤さんの意見です。
自分がワイングラスに鼻を近づけた時、自分の体の中でどのような変化が感じられるのかを、表現すれば良いと言われているのです。味にしても、同様です。
また、その時の体調や状態によっても、味や味覚は変わってきます。体調がすぐれない、疲労がたまっている、ストレスを感じている、緊張状態、怒り、悲しみといった感情までも、ワインの香りや臭いへの反応を別なものにします。
下に書きましたが、周辺の情報から味を推測する方法も、教えてくれました。飲んでみて、なんでそんな味なのかを知りたくなるのは普通です。また、口にしたことがないワインを、購入する際の指針にも使えます。
緯度から味を推測する
緯度が高い、より北にある地域で収穫されるブドウはすっぱいそうです。自然、ワインの酸味も強くなります。
ぶどうに太陽が当たらないと、光合成が進まないのですっぱくなり、太陽が十分にあたれば酸味が分解されて甘みがでます。どこの地方で収穫されたぶどうなのかを知れば、すっぱさの程度を知ることができます。
ワインの年数から味を推測する
年数が若いワインは、フレッシュで味がフルーティ。古いワインは複雑で、熟成しています。
ただ、ワインの味は年数だけでなく、収穫された年の天候や気候もぶどうの味を変えてしまいます。さらに、作る人によっても違ってきます。飲む人によっても、変わってくるのです。
味を表現するというのは、奥深く、難しいのだと言われていました。
ワインと合う料理の選び方
良く言われているのは、白ワインは魚に、赤ワインは肉にということです。
伊藤さんが提案するのは、色を食材を合わせることです。
赤味のある牛や羊は赤ワイン。豚肉は脂が美味しいので、白やうすい赤がおすすめです。ヒラメやフグのような繊細な味を楽しむ時は、とろっとしていないシャープな白ワインを。マグロは、赤の薄いものや白ワインが良いと、さらっと話していました。
奥はきっと深いのでしょうけど、入り込めない入口に一歩踏み出すには、良いアドバイスですね。勇気を持って、チャレンジしてみようという気持ちになりました。
ワインを飲んでいて愚痴はでない
ワインを飲む時は、グラスを傾けなければならないために、顎を上にあげて飲みます。顔を上にあげると、愚痴が出にくいといいます。ネガティブな気持ちにならない、仕組みがあるようです。
そういえば、身近にワインでやけ酒は聞きませんし、ワインの歌詞がある失恋ソングも思いつきません。単にワインは、価格が高くて、悲しい時にこれ以上お財布がさみしくなるのが、嫌だからもあるかもしれません。(またしても、失言しました。)
次回は、試飲した時の私の感想を書いてみます。一生懸命メモをとりましたが、ワインを飲んでいて酔っていましたので、間違っていたらご容赦ください。
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