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ADHDを乗り越える子育てに、バレーボールを使う

母の臨終間際に知るプレゼント

もし、わが子がADHDであったら。しかもADHDという病名がない時代にどう子育てをしていたのでしょう?注意をしても治らず、周囲からは悪魔の子のような扱いを受け続けて、母親は一体どうしたらよいのでしょう?

『十の輪をくぐる』 辻堂ゆめ著を読んで、しみじみと考えます。

泰介にとっては感謝しかない

泰介は子供時代より、母のバレーボールの特訓を受け続けていました。何のために特訓を受け続けなければならないのか知りません。母の熱意は届かず、夢だった実業団に入ることが叶いませんでしたし、スカウトもされませんでした。

絶対世界へ行ける、オリンピックへ行けると口癖のように繰り返していた母の期待を、見事に裏切ります。このことが泰介を苦しめ続けていました。

泰介は定年間近に配属された仕事でも、思うようにいかず自分より年下の上司にミスを指摘されるばかりです。そんな落ち込んでいるときに、自分がADHDであることを自身の娘に教えてもらうのです。娘が言うには、娘もADHDだということです。

バレーボールを続けていたのに、何も得るものがなかったと思っていたけど、バレーを続けていたからこそ、懐の深い妻に出会い、優しい娘に恵まれ、スポーツ業界に就職し、自分の才能を生かしてくれる同僚に活躍の場を与えられたことに気が付くのです。

ADHDを克服するためのバレーの特訓だったことにも、気が付きます。泰介はテレビをぼんやりと眺めている認知症の母の耳元で、『親が子供に贈る最高のプレゼント、か』と、つぶやきます。泰介の感謝の気持ちが、ひしひしと伝わる部分です。

生きづらい時代でも息子は見捨てない

終戦後20年も経っていない、貧しい時代でした。年下の兄弟を食べさせるために農家の子供は、中卒で集団就職をします。紡績工場で働いていた万津子は、三井鉱山の職員とお見合いをして結婚をします。前回の東京オリンピック開催の6年前のことです。

万津子は今でいうDV旦那で暴力に耐えながら、出産・子育てを行う羽目になるのです。一度、耐えかねて母に相談しますが、旦那から暴力を受けている女性は世の中に沢山いる、結婚とはそんなものだと軽くあしらわれてしまいます。離婚して出戻られても、実家で暮らせるような余裕がなかったのです。

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結局、DV旦那は鉱山事故で亡くなり、万津子は乳飲み子を抱えて実家に戻りました。子供は、落ち着きがなく、暴力的で周囲に迷惑をかけるばかり、近所に面倒を見てくれる子供にさえ暴力を振って怪我をさせる始末です。目が離せない子供を放置しておくことは危険ということになり、万津子は農業の仕事にも出かけることができません。

役立たずの居候といったところです。万津子の母の言葉には冷たい感情が混じり、万津子親子に対する嫌悪感が、一挙一動ににじみ出るようになるのです。

手を焼いた万津子がふと思いついたのは、バレーボールの練習です。当時の紡績工場は、労働環境改善のためにレクリエーションとして、女子バレーを取り入れるところが多かったのです。万津子の務める工場も例外ではなく、万津子は務める工場ではエースでした。

バレーボールを打ち上げる少年

バレーボールだけは飽きない

万津子の母には、泰介のことで夫の遺伝子のせいとか、躾が悪いとか責められるばかりです。

1964年東京オリンピックのバレーのテレビ放送で、日本女子の金メダルが決まると万津子は閃きます。バレーでなら、泰介を誰にでも可愛がられる、いい子に育てられるかもしれないと確信します。

万津子が想像した通り、何をやっても飽きてしまう泰介が、バレーの練習中だけは目をらんらんとさせながらボールを追いかけ続けます。飽きなかったのです。

ADHDには良い面もある

ADHDは悪いことばかりではありません。何か、面白いことを見つけると、寝るのを忘れて熱中する才能があります。泰介にとって、その面白いことがバレーだったのです。

人によっては、他の人とは違う新しいアイディアをどんどん考えるのが得意とか、行動力がずば抜けているとか、良い面はたくさんあります。歴史上の人物でも、ADHDが疑われている人がいて、エジソン、坂本龍馬、スティーブ・ジョブズといった人たちです。

泰介は今でこそ年下の上司に叱られる毎日だけど、かつては多くのアイディアを出して、会社に評価された時期もありました。今度は、かつての同僚から、スポーツジムの運営企画を頼むと依頼され部署を移動することになりました。

自分の特性を生かして生きる方法は、母がバレーを通して入念に敷いたレールのおかげだったと、再度再度気が付くのです。

十の輪をくぐって万津子の夢がかなう

バレーを通して知り合った奥さんとの間に生まれた娘は、両親のバレーの才能を受け継ぎメディアでも話題になりかけています。高校バレーボール選手権大会の一つである春高バレーで、エースとして活躍し優勝に導きました。

泰介に、オリンピック選手の夢を打ち明けます。万津子の夢は孫が叶える、その孫が十の輪をくぐってたどり着く夢を見ました。

「十の輪って?何かって?」それはこの本を是非読んで、確かめてください!

『十の輪をくぐる』のアマゾンのURLはこちら。

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