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特別な人とのおやつの思い出

こんなホスピスがあればいいね

多くの人が望む最期は、前日まで家族や友人と語らい、家事や仕事でさえも行っているといったところでしょうか?ピンピンコロリは理想ですよね、確かに。よく高齢者が老人ホームに入らず自宅で終えたいといいますが、ここにも似た願望が含まれていると考えます。

ただ、現実は多くの人が病院や施設で最期を迎えているのです。介護や医療処置を行わなければ、生活すらままならないからです。もし、誰かの介助が必要になると分かった時、私ならどういう選択をするだろうかとふと考えます。

是が非でも1日でも長く生きる道を選ぶか、最低限の医療措置で穏やかな死を迎えるか?あるいは、在宅か、施設か、病院か?

ガン患者の手を握る家族

生きていく生活に質(QOL)があるように、死に方にも質(QOD)があると言います。理想すぎると思えるほど、素敵なホスピスの話を読みました。小川糸さんの『ライオンのおやつ』です。こんな風に最期を迎えることができれば、いいねとしみじみ思いました。

おやつのシーンに共通しているもの

『ライオンのおやつ』は、余命を知った主人公 雫のレモン島(離島)での、生活が描かれています。『ライオン』というのは施設の名前。週に1回、抽選で選ばれたゲストが提案するおやつを味わいながら、おやつにまつわる思い出話をゲストみんなで聞ききます。

ライオンでは、入居者のことをゲストと呼んでいるそうです。

人生の振り返り方は色々あるけれど、『おやつ』に視点を合わせていることが、小説全体を温かくしています。おやつから連想するシーンには、親しい人たちとの語らい、お見舞い、手作り、お祝い、慰めがなど思い当たります。その多くは他人の心遣いがありますからね。こうしたぬくもりのあるおやつの思い出は、誰しも少なからず一つや二つは持っているはずです。

他人から見て凄く感心するような話ではなくても本人にとっては大切なこと、ありきたりの日常生活の中での思い出だから、みんなで心を寄せることができます。おやつの時間ってどんな偉い人でも、普通の一人の人間にさせてしまいます。

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緩和ケアの色々

緩和ケアと一口に言っても、健康な暮らしをしている人にとっては馴染みがありません。WEBで検索してみても、抽象的な言葉が羅列されていてイメージが沸きにくいですよね。

ライオンでは、次のようなことが行われていました。

ボランティアによるセラピー

ライオンでは音楽セラピーや似顔絵セラピーなど、ボランティアで緩和ケアが行われています。ライオンにホスピスに訪れるスタッフは、多いのだそうです。

雫もセラピーを受ける様子が書かれていますが、患者と一対一で接していてそれはそれは贅沢だと感じました。

ただ、ライオンを運営するマドンナは、この状況に満足していません。日本はまだまだ、セラピーに対する認識が欧米と比較すると低いのだそうです。ひとり一人に合ったオーダーメイドのサービスを、ボランティアではなく賃金を支払って行いたいというのです。

雫はもともとホスピスで飼われていた六花という犬と、仲良くなります。六花もセラピー犬として、雫を癒してくれるのです。

セラピーとモルヒネ

がん患者の場合、痛みを和らげるためにモルヒネを使いますが、セラピーも役立っている理由を雫は次のようにつぶやいています。

セラピーを受けて喜びや幸せを感じるエンドルフィンという神経伝達物質は、モルヒネと化学構造が似ているから痛みが和らぐのではというのです。

運営者マドンナの姿勢

施設の良し悪しは、運営者の考え方も影響していると思います。運営者であるマドンナが、雫達ゲストにつぶやく言葉の中にカウンセラーとしてのプロ意識を感じました。

余命の少ない人たちにとっては、こういう言葉がきっと救いになるに違いありません。
『人生というのは、つくづく一本のろうそくに似ていると思います。
ろうそく自身は自分で火をつけられないし、自ら火を消すこともできません。一度火が灯ったら、自然の流れに逆らわず、燃え尽きて消えるのを待つしかないんです。』

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